2008年10月31日金曜日

DVD「マッケンジー脱出作戦」mckenzie break


「マッケンジー脱出作戦」
The McKenzie Break
1970年 アメリカ映画
監督ラモント・ジョンソン

マシンガンで殺し合う戦場に比べたら、人権を尊重してくれる捕虜収容所の方がよっぽどマシな気がする。
そこを脱走してまでまた戦線にかり出されたいかね。
実際の収容所はそんなにいい所でもなかったろうし、脱走して戻って来たら(それも敵の島国から)英雄扱いされるのだろうか。
社会集団としての人間の行動はそんなに単純なものでもないと、この映画でもある程度描かれています。

イギリスにあるドイツ軍捕虜収容所の名前がマッケンジー(地名?)で、このタイトルからすると、収容所からみんなで頑張って脱走してやるぜ、てな映画かと思われそうだけれどちょっと違う。
捕虜の脱走を逆手にとって、Uボートを捕獲してやろうという諜報戦を描いてる、とも言い切れない。なにしろ捕獲できなかったので。
イギリスがドイツになかなか勝てなかったというのも納得してしまう一本。アメリカ映画だからいいのか。

けれど、全編緊張感があって、引きつけられるように見てしまいました。
なるほど捕虜が何百人もいて、監視する側の人数が充分にいないと、元の社会を基盤にしていながら、収容所内のみの独特な社会がすんなりできてしまうのですね。そのへんリアルな空気を感じてしまいました。
映画というものは普段と別の文化を見せてこそ、感じさせてこそ、と思っているのでそのあたりは評価できます。
特に建物内よりも、外の空気からもそういったものを感じてしまう。カメラマンや美術スタッフがいいのですね。

ラストが喧嘩両成敗みたいになってて、どうやら、史実に基づいているから、なのかな。
ドイツ軍捕虜のリーダーのやることがあまりにも卑劣で、これしきのことでは溜飲下りないんだがなあ。
有能と思わせぶりなブライアン・キースがそうでもなくて、考え方は正しくてもやる事が後手にまわってしまう。
ドイツ軍側のうまさ、ずるさばかりが目立って、娯楽映画としてのバランスがいまいち。
娯楽映画に徹しないならそれでもいいけれど、もっとドロドロさせてでも、テーマをくっきり描いて欲しかった。
あまり史実を気にすると、こうなってしまうのかな。
優れた映画のもつタッチがあって、ちょっと脚本をいじればなんでも出来そうなだけに、ちょっと残念に思います。


漬け物樽のフタみたいな盾がしぶい。


DVDの表紙にもなってるこの人、あっさり死んじゃいますので。

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