2008年1月23日水曜日

最近読んだ小説 H・G・ウェルズなど novels

H・G・ウェルズ
「モロー博士の島」
1896年
ハヤカワから出てるH・G・ウェルズ傑作集1という短編集です。
最近古本屋で買ったのですが、文庫本の表紙が映画「D.N.A」になってるのでその頃に刷られたものですね。敬愛するフランケンハイマーのハズレ映画だ〜。
70年代にも映画化されていて、どっちもロクに覚えちゃいないんだけど、70年代バージョンはバート・ランカスターが出てるからちょっと見たい。
ロクに覚えてないけど映画の印象よりも原作小説の方がシンプルで、島にさまよい込んだ主人公の内省面が濃く描かれているので、感情的にはリアルに読めます。
モロー博士の実験はさすがに、今現在リアルに思わせるような説明ではないけれど、当時は「もうちょっと科学が進歩したらこれが現実になるかも」って思われたんですかね。
おっと、今だってそう思わせる科学技術はあるんだけど、小説では外科手術がメインの技法になってるからSFとしては古く感じてしまうのですかね。でも読み物としてはとても面白いです。ハラハラします。
映画では人間が動物っぽいメーキャップしてウロウロするのだけれど、小説の方がやはりイメージが奔放でより不気味ですね。
短編集のどの作品も濃密な空気を感じます。怪談集みたい。

アマゾンにあったのは東京創元社の本です。早川は生産中止かな。


ハル・クレメント
「20億の針」
1950年
これは面白かった。
宇宙から来た2体の寄生生物。一方は逃亡中の犯罪者で、一方はそれを追う捜査官。
そう言えば「ヒドゥン」なんて映画がありましたな。
映画と違って派手なアクションはないけれど、いちいち興味深いです。
正義の捜査官-"捕り手"-が状況をどう分析してどう行動したか、そんな文体のみで"捕り手"の一人称に近く、その冷静な文体がまた異質な感覚、SFっぽさを増長するんですね。
アメーバ状の生物が人間の体内にどう入って寄生するか、必要になったところでどうやって宿主とコンタクトするか。
犯罪者の方も誰かに寄生してるだろうから、広い惑星上でどうやって捜すか、途方にくれるけどそこは宇宙人、仕事にかけられる時間や忍耐のレベルが人間とは違うのですね。そういった説明が細部にわたって描写されてて非常に面白いです。
"捕り手"の宿主が少年というのもいいです。小説に気持ちいい躍動感があるし、事態を飲み込める柔軟さと"捕り手"を手助けする意思はあっても、子供だから行動が制限されてしまう。この状況がいいじゃないですか。
続編も翻訳されてるらしいので読みたいですね。
ただ、翻訳のせいなのか、句読点が多くて僕にはちょっと読みにくい感じがしました。

2002年に再版されてるけど、もう古本しかないのかな。


R・A・ラファティ
「宇宙舟歌」
1968年
ラファティの小説についてはこのブログ2008.1.11.にも記述があります。
ラファティらしいすっとぼけたホラ話で面白いんだけど、文庫本で読みたかった気もする。ハードカバーだから2200円もした〜。
長編ではあるけれど、章ごとに違う星に行って独立したエピソードのようになっているので、短編のような読みやすさがあります。
オレは小説なら短編よりも長編が好きだ、という人でもラファティ作品は短編が読みやすいことは認めるでしょう。
でもラファティ長編のクラクラ感に目覚めてしまった僕としては、本作はちょっと物足りないかな〜。たいして深読みできない人なので。


ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
「すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた」
1986年
数少ないハヤカワファンタジーの蔵書。SFじゃなくFTになっちょる。FTは滅多に買わないですね。SFで好きになった作家でもないと。
じんわりとした怪談集みたいだからまあ、ファンタジーになりましょうか。
ユカタン半島の不思議な夜に思いをはせたくなる、軽い読み物といったところです。


ロバート・J・ソウヤー
「占星師アフサンの遠見鏡」
1992年
知性をもつ恐竜が中世さながらの生活をしてる世界。
そこで近代的な天文に気付く少年恐竜の冒険を描いている。
面白いんだけれど、恐竜が主役なら、恐竜社会の恐竜文化を描くなら、もうちょっと異質な感覚を読みたかった。
わざわざ恐竜を使ってまで、近代西洋科学は正しい、みたいな主張されてる感じでねえ。
もっともSFって基本的に西洋科学から発してるものがほとんどなんですけどね。


テッド・チャン
「あなたの人生の物語」
2002年
とても興味深く、これはこうだね、ああだね、と話題にしたくなる話がぎゅっと詰まった短編集です。
いいですね。
たとえばこんな話題。
「顔の美醜について」は顔のよしあしを感覚する脳内部分をのみをいじくる事で、顔から受ける相手の印象を抑制しようとする脳操作の話。
それを是とする姿勢やコミュニティ「外見で人を評価するのはやめよう、顔のよしあしで能力とは関係なく評価されるのはまっぴらだ」という主張と、そんなものには反対だという主張との(架空の)インタビュー集です。
とりあえず僕はそんな操作受けたくないですね。人の顔をみる面白さが減るんでしょ。
それにこの小説(インタビュー集だってば)の中で言われてるほど、美男美女ってそんなに影響力あるのかな。
西洋人にはそうなのかな。人種は関係ない?
一般的な美男美女はどうでもいいけど、自分好みのかわいいコから何も感じなくなるのはちょっとさみしいですね。

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