2008年10月31日金曜日

DVD「マッケンジー脱出作戦」mckenzie break


「マッケンジー脱出作戦」
The McKenzie Break
1970年 アメリカ映画
監督ラモント・ジョンソン

マシンガンで殺し合う戦場に比べたら、人権を尊重してくれる捕虜収容所の方がよっぽどマシな気がする。
そこを脱走してまでまた戦線にかり出されたいかね。
実際の収容所はそんなにいい所でもなかったろうし、脱走して戻って来たら(それも敵の島国から)英雄扱いされるのだろうか。
社会集団としての人間の行動はそんなに単純なものでもないと、この映画でもある程度描かれています。

イギリスにあるドイツ軍捕虜収容所の名前がマッケンジー(地名?)で、このタイトルからすると、収容所からみんなで頑張って脱走してやるぜ、てな映画かと思われそうだけれどちょっと違う。
捕虜の脱走を逆手にとって、Uボートを捕獲してやろうという諜報戦を描いてる、とも言い切れない。なにしろ捕獲できなかったので。
イギリスがドイツになかなか勝てなかったというのも納得してしまう一本。アメリカ映画だからいいのか。

けれど、全編緊張感があって、引きつけられるように見てしまいました。
なるほど捕虜が何百人もいて、監視する側の人数が充分にいないと、元の社会を基盤にしていながら、収容所内のみの独特な社会がすんなりできてしまうのですね。そのへんリアルな空気を感じてしまいました。
映画というものは普段と別の文化を見せてこそ、感じさせてこそ、と思っているのでそのあたりは評価できます。
特に建物内よりも、外の空気からもそういったものを感じてしまう。カメラマンや美術スタッフがいいのですね。

ラストが喧嘩両成敗みたいになってて、どうやら、史実に基づいているから、なのかな。
ドイツ軍捕虜のリーダーのやることがあまりにも卑劣で、これしきのことでは溜飲下りないんだがなあ。
有能と思わせぶりなブライアン・キースがそうでもなくて、考え方は正しくてもやる事が後手にまわってしまう。
ドイツ軍側のうまさ、ずるさばかりが目立って、娯楽映画としてのバランスがいまいち。
娯楽映画に徹しないならそれでもいいけれど、もっとドロドロさせてでも、テーマをくっきり描いて欲しかった。
あまり史実を気にすると、こうなってしまうのかな。
優れた映画のもつタッチがあって、ちょっと脚本をいじればなんでも出来そうなだけに、ちょっと残念に思います。


漬け物樽のフタみたいな盾がしぶい。


DVDの表紙にもなってるこの人、あっさり死んじゃいますので。

2008年10月30日木曜日

最近読んだ小説 novels

エド・マクベイン
「でぶのオリーの原稿」
2002年
知らなかったんですけど、エド・マクベインは2005年に亡くなっていたのですね。
遅ればせながら合掌です。

写真は1997年に撮影されたものです。いい顔してる〜。

ロジャー・ゼラズニイ
「地獄のハイウェイ」
1969年
そう言えば、あまり関係ないけれど、「バトルトラック」って映画がありましたね。なんとなくまた見たくなってしまった。

グレッグ・イーガン
「順列都市」
1994年
イーガンの代表作みたい。
小ワザがいっぱいあって、驚嘆するはずの大ワザを淡々と受け止めてしまった。

朴商延
「JSA 共同警備区域」
1996年
映画「JSA」の原作小説。
映画と違って原作では捜査官の過去に重みがあって、その独白と現在の事件から南北分断を描いてます。
作者は1972年生まれだから、24歳でこんなに重たくて力強い小説を書いたのか。凄いな。

ロバート・J・ソウヤー
「さよならダイノサウルス」
1994年
これは楽しく読めました。
白亜紀にタイムトラベルした研究者が見たものは、アメーバ生物に寄生され、言葉を喋る恐竜だった!
誰も実際のところを知らないのをいいことに、作者は地球や太陽系の過去についてどんどん自説を展開していきます。もちろん科学知識に裏打ちされてるようにみせながら。SFはこうじゃないと。


デズモンド・バグリイ
「砂漠の略奪者」
1969年
「裏切りの氷河」
1970年
1年前に「マッキントッシュの男」を読んで(このブログ2007.8.1.の投稿)、すっかりファンになったはずなんだが、1年読んでなかった。
ふつうに新刊書ではあまり売ってないし、古書でも僕の行動圏ではあまり見かけないんだなあ。売ってるとしたら100円ぐらいだろうけど。
と思ってたらブックオフにあったので2冊買いました。
同じ時期に書かれているようだけれど、だいぶ毛色の違う2作品です。
まあどっちも"冒険小説"ですが。
「砂漠の略奪者」は、プロとは言い切れない人たちによるチームワークの冒険もので、幸運のおかげで作戦がうまくいく部分がかなりあります。そこで興ざめさせることなく、男っぽいファンタジーとして成立させてしまうのですね。
「裏切りの氷河」はもっと非情なハード・アクション系、殺しと諜報の世界です。そのハードっぷりが激しいのですね。狙撃オタクにもお薦め。

2008年10月24日金曜日

映画「ウォンテッド」wanted

於TOHOシネマズ西新井

「ウォンテッド」
Wanted
2008年 アメリカ映画
監督ティムール・ベグマンベトフ

なかなか痛そうな映画でした。
たいていの怪我は短時間で治してしまう"魔法のお風呂"のおかげで、虚弱な主人公はボコボコにのされまくる。
その痛そうな描写を、僕はまあ、娯楽映画として笑って見られましたが、「ファイト・クラブ」のような芸術的必然性があるわけでもなく、もっと普通に作ってよかったんじゃないの?とも思う。
今どきこれくらいの暴力は普通、なのかな。

主人公の境遇や、その他のキャラクター、役者、どれもいいと思います。
モーガン・フリーマンいいっすね〜。よく通る声が耳に心地いいのです。
7月頃には自動車事故で重体説もありましたね。もうそれなりに高齢なのだから、あと何年この声を聞けるだろうか。は〜、ありがたや、ありがたや。ラストもちょっとお茶目じゃないですか。

しかし肝心の暗殺組織"フラタニティ"って、なんだよこれ、織物に偶然できたパターンから人名を解析してその人を殺すって、そんなんで殺されちゃたまんないよ〜。「殺していいんだろうか」ってそりゃ悩むわな。
もっと普通に、大統領が指令する、とかでいいじゃん。
このせつは大統領もロクなもんじゃない、どこに絶対的な"正義”を設定していいかわからないから、神様にやってもらおうという事ですか。

織物工場で訓練するあたりはバカっぽくて好きだけど、この超自然的な前提を通すなら、暗殺シーンはもっとリアルな方がいいのでは。
あるいは織物に偶然パターンが出るという神秘性と、それによりかかる狂気を描いた哲学的SFアクションにするとか。
ようするに暗殺組織を背景にした"超人ゲーム"を描きたかったんだろうけれど、組織の前提にどうも納得いかない。
だからほうら、M・フリーマンみたいな悪者にいいようにされてしまうのだ。こんなトンデモ組織、ブッ潰れて当たり前だ。
(組織の神秘性が映画の重要な魅力だったのに、ラストに壊滅して終わりというのもどうなんだ)

大なり小なり突っ込めるところがあって、それなりに面白い映画だけれど、やはりアクションがね〜。
弾丸を追いかけたりとか、車が飛んだり跳ねたりとか、もうそんなCGには飽きたなあ。いいかげんやめてほしい。
コミック調のテイストとしてわからないでもないけれど、組織の前提にリアルさがないから、アクションシーンはよりリアルなものでないと。

2008年10月21日火曜日

DVD「夜の訪問者」cold sweat

一昨日の「さらばバルデス」と一緒に買ったものです。(このブログ2008.10.19.の記述)
これも780円。
アマゾンでは1500円未満は送料を払わなければならないので、2作品買ったのです。
それならブロンソン2本立でしょう!正しい選択です。

「夜の訪問者」
COLD SWEAT
1970年 フランス映画
監督テレンス・ヤング

フランス映画だけど、アメリカ版のマスターで、たぶん編集も多少違っているでしょう。
本来の原題もきっとフランス語のはず。


これもあまりいいマスターではないけれど、同じ販売元の「さらばバルデス」に比べたらちょっとマシかな。

フランス映画とは言うものの、監督がテレンス・ヤングなので、アクション映画、サスペンス映画としてきりっとまとまっています。
普通にテンポよく見られる映画です。
フランス映画ともハリウッド映画とも違う、テレンス・ヤング映画としてタイトな魅力をもっています。
そしてブロンソン主演、これはいいですね〜。
ああ、もうちょっといいマスターだったらなあ。

悪役のジェームズ・メイスンが凄い迫力!
こんな人だっけ!?
いやまあ、こんな人だったけど「砂漠の鬼将軍」などから、"規律に厳しくて理想の高いインテリ"のイメージが強いけど、この、復讐に舌なめずりする悪党もいい!
あごひげはやして目をギラつかせて、ふてぶてしいニヤニヤ笑い。
しかも全然似合わないパステルカラーの帽子かぶってる!
フランスの港町だから、バカンスっぽい格好にしたつもりだぞきっと。最高だこの人。
後半、腹を撃たれて血がドクドク流れ出て、顔面蒼白になりながらピストルを構えつづける、その存在感も凄い。

ブロンソンの家族が誘拐されて、とりあえず要求された行動をとると見せかけて、スキがあったら即反撃、この切り返しがいいです。
要求された行動というのが、船で正体不明の相手と接触する事で、それはそれでミステリアスなのに、そこまでいかないうちに鮮やかな反撃が始まる。
ミステリーを解明しないことからくるフラストレーションがない。
後でブンロンソンが、これはきっとこういう事だろうとボソボソ言うだけ。
普通の映画だったらより大きなミステリーをより大きな山場とするのだが、この映画はキャラクター優先に組み立てられているし、出演者も粒揃いなのでその方がいいのだ。大きなミステリーをあっさり捨てることで、目前の現象やキャラクターの行動にリアルさと緊張感が加わる。いい脚本だ。
原作はリチャード・マシスン。スピルバーグ「激突」の原作・脚本書いた人。
エルモア・レナードに代表される、キャラクターベースの犯罪小説がベースになってるのですね。

後半のカー・アクションが、あれれ?
だって、時間に間に合わせるために急ぐ車の映像のはずなのに、"カーチェイス"の迫力満点で、追われるわけでも追いかけるわけでもないのに、警察のバイクが追ってくるけどいまいち敵としては情けないし、しかも時間に間に合ってないのは観客みんな知ってるし、でも迫力あるから見ててだんだんのってくる、だからいいのかな、急いだなりの効果があって妻子を助けられましたから。
それまでキャラクターベースのやりとりや、殴り合い、脅し合いだったのに、急に車が主張しているように感じられて、どこかちぐはぐな感じがするのですね。これが迫力あるだけになんだかもったいない。

今だったら"先の読めないクライム・ムービー"とか言われちゃいますかね。それとも"家族を守る"に力がはいるのかな。
いずれにせよ、タイトでスタイリッシュで、いい映画だと思います。



ところでフランスの草って燃えやすいんですね。



検索したら、海外サイトで「雨の訪問者」(Cold Sweat)と「さらばバルデス」(Chino)の二本立てDVD売ってるのみつけました。
二本立てだけど、DVDは1枚みたい。
たぶんマスターは僕が買ったものと一緒でしょう。
6.45ドルって、安いなこれ。
http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=7115015

2008年10月19日日曜日

DVD「さらばバルデス」chino

DVDで定価780円ってどうなのよ。
通販サイトで見るジャケット画像からしてもう、マスターの悪さが予想できますね。
でもいいや、他にDVDでソフト化されてないようだし、780円だもんね。



「さらばバルデス」
CHINO
1973年 アメリカ イタリア フランス映画
監督ジョン・スタージェス

このDVDはアメリカ版みたいです。はるか昔にマスタリングされたのでしょう。
なるほどこれはひどい。
音もあまりよくないな。

僕は初めて見ましたが、悪いマスターでもすぐに好きになりました、この映画。
ジョン・スタージェスの映画としては、ダイナミックなアクションや男臭いやりとりがあるわけでもなく、不評なのもわからないではない。
けれど一説によると、実質的な監督はスタージェスではなくてドゥイリオ・コレッティらしいです。
たしかに、映画っぽく作られた世界ではなく、自然の光や動物を利用しているあたりはあまりスタージェスらしくない。ハリウッド映画に比べたら、現場での低予算っぷりもうかがえる。何か事情があって、スタージェスはホテルでふて寝でもしてたんでしょうかね。
でもそのおかげか、この映画にはちょっとさわやかでかわいい、不思議な印象があります。
チャールズ・ブロンソンとヴィンセント・ヴァン・パタン、ブロンソンとジル・アイアランド、それぞれのやりとりがどことなく微笑ましくて、心なごみます。
ジル・アイアランドの乗馬姿をさんざんなじっておきながら、風呂に入ってるところを見られると恥ずかしがるブロンソン。
ブロンソンが女と結婚すると言い出したら、ブロンソンを慕っているヴィンセント・ヴァン・パタンがさみしそうな顔したり。
ブロンソンの役名がチノ・バルデスなので、タイトルを変えて「さよならチノ」ぐらいにしてもいいんじゃないかなこれは。

ラストに銃撃戦はあるものの、適当なところで切り上げて「オレはこの土地を出て行く」ってブロンソン、あまり映画のヒーローっぽくないけれど、飄々としたキャラクターらしいとも言えるし、無用な殺傷はしたくないとしたら、リアルにこういう選択もありでしょう。
むしろ少年との別れがあっさりしてる方が僕にはフラストレーションかな。
あの後、ジル・アイアランドと駆け落ちするのかな。。

ジョン・スタージェスという名前を冠したばっかりに、かえって不当な評価を受けている気がします。
それにマカロニウェスタンとしても認知されないし。

いちおうアクションシーンはあるものの、最小限ですね。
それよりも、人物と人物の結びつきややりとりを描いて、どこか爽やかな魅力ある映画にしようという意図がうまく働いています。
ドゥイリオ・コレッティについてはまったく知りません。
1950年代にイタリアで戦争映画を多く作ってるようですが、どれも今は見るのも難しいみたい。
マカロニウェスタン全盛の頃にはもうあまり監督してないようなので、現場で若い監督に才能発揮させるために、裏方にまわってたのでしょうかねえ。

VHS「傷だらけの栄光」somebody up there likes me

台東区の中央図書館から借りました。
ポール・ニューマン追悼です。
VHSデッキ使うの久しぶりだな〜。1年以上使ってない。
テープからまったりしないかな。

「傷だらけの栄光」
Somebody Up There Likes Me
1956年 アメリカ映画
監督ロバート・ワイズ



ロバート・ワイズというと、僕がすぐ思い浮かぶのは劇場版「スター・トレック」の1作目ですね。
このブログだと「砲艦サンパブロ」(2007.8.23.の記述)がありますな。
「砲艦サンパブロ」が、目的のわからない映画?だったのに対し、この映画はわかりやすい!
短絡的な不良少年が、ボクサーとして大成するまでを描いている。

脇役ひとりひとりのキャラクター造形がしっかりしていて、見ごたえのあるドラマでした。
実在のボクサーの手記がもとになっているようで、多少ドラマ風にオブラートしていても、場面や人物にはハッとさせられます。
そのあたりがシナリオのさじ加減とキャスティングの妙でしょう。

ポール・ニューマンはどうなのかな。
演技がどうだ、というわけではない。
役作りにかなりの力を入れたようだし、それがこちらにも伝わってくる(伝わってくるのがいいのかどうかはさておき)。
でも見た目がヤサ男すぎないか?前半の不良少年部分がしっくりこない。いや、こんな二枚目のゴロツキがいてもいいし、見てるといそうな気がするけれど。
それでも、前半でちらっと出て来たマックイーンの方が、ハングリーでギラギラしてるように見えてて、少年院や感化院をすぐに脱走するにはぴったりだ。
家庭人になって、チャンピオンとなるあたりの貫禄は、P・ニューマンの方がしっくりくるけれど。
マックイーンだったらやっぱり、ボクサーになりきれないで撃たれて死ぬんだろうなあ。
それにP・ニューマンの方が重いパンチを出しそうに見えなくもない、かな。

僕はあまりP・ニューマンの映画は見てないけれど、こういった「トンがってギラギラした若者」を多く演じてるとは思えないので、当人もそんなに得意ではなかったのではないかな。

だからダメという事はまるでない、たしかに力を感じる名作ですけど。

2008年10月18日土曜日

映画「ダークナイト」the dark Knight

於TOHOシネマズ西新井

けっこう前に見ていたのだけれど、なんとなく書きそびれてました。
もう記憶が…

「ダークナイト」
The Dark Knigth
2008年 アメリカ映画
クリストファー・ノーラン監督

久しぶりにエリック・ロバーツを見たなあ。
それはともかく、なんだか皆さん苦悩なさってますねえ。
どうせアメリカ映画なんだから、最後はガチンコでしょ?そんなに悩まなくったって。
と思ったらこういうラストですか。これならこの映画の長さ(152分)もわからないではない。

しかしこの映画が心情的に納得いくものかというと、そんな事もないなあ。
この映画自体もキャラクターも、「苦悩することに酔っている」みたいで、見ているこちらとしては一歩引いてしまう。

ジョーカーというただ一人の極悪人が特に問題で、そいつが突然変異的に現れたのであれば、力で排除してしまえばそれでいいはず。
それをやりたくてもできないのは、突然変異的ではなく、自然発生的に出現したからで、犯罪に対処するのではなく根源の問題をどうにかしなければ、、ってそれはアメコミヒーローの得意仕事じゃないから、悩んでる、のかな。

それにしては、自然発生的な犯罪者にしては、ジョーカーがやること、規模とタイミングが完璧すぎる。
あんなのバットマン並みに非リアルな犯罪者でなければできないでしょう。この映画で提示されてるようなショボい組織ではまず無理。
「ダイ・ハード」シリーズの悪者連中のような、それなりの組織と潤沢な資金が必要なはず。(資金はジョーカーさん、途中で札束燃やすふりしていくらかキープしたのかも知れないけれど)
それなら「ダイ・ハード」シリーズと同じように悪者を排除してしまえばそれでいいはずなのだが、排除できないようにシナリオがリードしてるようで、どうも釈然としない。

シナリオにもっと説得力が欲しい。言わんとすることは分かるのだけれど、もっとビジュアル的な、巧いうったえかけがないと「はあそうですか」としか思えないのだなあ。
バットマンもなんだかんだ言ってわがままなだけじゃん、とか思ったり。
そのわがままを貫き通すところで、この映画がウケているのかな。
僕としては悩んでわがまま通すよりも、悩まずに通す方がかっこいいのだが。

アクション映画を見すぎたせいで、悪者はこれくらい完璧なタイミングで事をおこして当たり前だ、と多くの観客は思うのかも知れない。
でも僕は、いかにもアメコミなヒーローでもリアルな苦悩を描くなら、リアルな街とリアルな犯罪過程を描くべきだと思うのだなあ。
ジョーカーという"個"が突出していて、普遍的な犯罪やテロを描いている気がしない。

マニア的には評価の高い映画のようだし、ひいきのC・ノーランが大ヒット飛ばした映画だから、それなりに「嬉しい」という気持ちさえあるけれど、それ以上のものはないなあ。

「世界のために、世界の嫌われ者になってやる」こうなるともう、ピントのずれた苦悩が暴走してるようにしか思えない。(しかもそれに酔っている)
現実世界のアメリカもこうなりつつあるのかな。

音楽がよかった。ハンス・ジマーとジェームズ・ニュートン・ハワード。
前作「バットマン・ビギンズ」もこの二人だったようだけど、まるで覚えていない。
でも本作はズシンと来ました。サントラ欲しくなっちゃうねえ。

2008年10月16日木曜日

FU "JESUS CHRIST" PV製作 記述2 〜三脚不要?

記述1のつづき

ブロックノイズも問題だけれど、もっと大きな問題だったのが、必要なテイクを撮れなかった事。
特にボーカルの顔アップの映像は、最後にワンテイク撮ったのみで、しかも目に点が入ってない。
うわ〜、点がないよ〜、と撮りながら思っていたのだが、時間がなくてそのまま撮ってしまった。
リードボーカルのユビ君が作詞作曲もして、ギター弾いてるバンドなのに、フロントマンがそんな貧弱な映像ではいかんのではないか。
もっと撮るつもりだったのだが、時間がなくて撮れなかった。

なぜ時間がなかったのか。スタジオ4時間借りれば余裕だったのでは?
ドラムが少し遅れて来たので、その影響もあるでしょう。準備と後片付けの時間を除いて、実質撮影にあてられたのは2時間強ぐらいかな。
それにしても、短い曲だから、撮影スタート時点では大丈夫と思っていたのだがなあ。
カメラのセッティングに時間がかかったのだ。
"divine"の時は手持ちカメラの映像で、あまりかっこよくないなあと思っていたので、今回は三脚をメインで使う事にした。
そのカメラポジションのセッティングに時間がかかった。
僕の場合は、二人以上の人物が同じフレームに入って、どちらかあるいは両方がアップになっている画面が好きなのです。
けれどそれを三脚で狙うとなると、まず演奏するポジションに立ってもらって、カメラ位置を決めて、さあ実際に演奏となると、人間ですから微妙に体が揺れる、動く、そこがいいんだけれど、ああもうちょっとカメラが右に動いてくれたら、下に…上に…
特にキーボードの指がビジュアル的にも注目しやすいのだけれど、背景も含めてきっちりフレームにとらえるとなると、時間がかかる。
カメラをセッティングして撮ったのに納得いかなくて、同じようなアングルでもう一度撮ったりとか、そんな事やってたら時間がなくなってしまった。
三脚もいいけど、撮りながらカメラを移動するのは難しいので、一脚を持って行って多用すればよかった。
ていうか、ワンテイクづつ、きっちり三脚で絵作りして撮ったら、4時間でも足りないんだな、ということに気づきました。

バンド4人のまわりをぐるりと多方向から撮影して、その後に、さあもっと色々やってみようか、より独創性の高い撮影はこれからだぜ、となるはずだったのに、ひとまわりで終わってしまった。

もうひとつ反省点。
シンバルの裏側にスタジオがマジックで何か書いている、プラス、ミュートさせるためにガムテープも貼っている。
それが撮影の時にはさほど気づかなかったのだけれど、家に帰ってビデオを見るとすんごい気になる。
かっこいい画だと思っていたのが全然そんなことなくてボツ、というのが少なからずありました。
ガムテープごときでミュートになるんかいな?と思っていたのだが、やはりそうでもないのか、divineに比べると、音源と違う部分をドラムが叩いているところが多かったです。
おそらくライブなどで何度も演奏しているうちに、この曲はこう叩くんだ、というパターンが固まるようで、でもそれが録音した時と違っているのですね。何度も撮って、同じ部分で同じように違うので。
だからいちがいにミュートの問題ではないのかも知れないけれど、もっとミュートできた方がいいんだろうなあ。
しかしシンバルの裏側はきれいな方がいい。
ブラジルUFOの撮影の時はシンバルの裏にタオルをテープで貼ったからねえ。
そうだ、ドラムが出演するテイクがあっても、顔が必ず写るとは限らないから、そういう時はヘッドフォンしてもらえばいいんだ。
ドラムの手元のみなどのカットで、シンバルの裏側がはっきり写るような撮影をヘッドフォンして先にすませて、その後きっちりミュートして、シンバルの裏側が写らないようなカメラ位置から、ドラムの顔を撮る。それがいいのかな。

スタジオを下見する時、シンバルの裏側も見ないと。

FUのサイト
http://www.mfu.be/
MySpace
http://www.myspace.com/izigenmusic

2008年10月12日日曜日

FU "JESUS CHRIST" PV製作 記述1 〜ブロックノイズ頻発

バンド"FU"のプロモビデオ撮影をしました。
セカンドアルバムが近日発売なので、それにあわせて、ですね。

1stアルバムの"divine"のPVも以前に作っています。このブログのサイドバー「自作Music Video」に表示されてます。

今回撮影した曲は"JESUS CHRIST"。
セカンドアルバムはメロウな曲が多い中で、この曲が一番ハードな印象ですね。
さらに曲名が「ジーザス・クライスト」ですからね〜。
歌詞は英語でわかんないけれど、きっと思い詰めた内容だろう。
であれば、照明は、明るい部分と暗い部分がはっきり分かれた、コントラストの強いものがいいかな〜と思ったので、そのようにしてみたつもりです。

撮影は小岩のスタジオM1stで行いました。撮影用のスタジオではなく、音楽スタジオ、練習スタジオです。
スタジオは4時間借りました。divineの時も4時間だったような気がするし、divineは5分以上の曲なのに対し、JESUS CHRISTは3分未満の曲なので、4時間あれば余裕だろうと思ったのです。
天井のレールに付けるための照明を持ち込んで、セッティング。だいたい音楽スタジオの照明って暗いからね〜。
しかしこちらも慣れた作業ではないので時間もかかったし、出来上がった照明は、むうう、ベースにもっと光を当てればよかったなあ。
ベースの真上のレールに照明を付けると、画像にゴーストが出やすくなるのでやめたのだ。
でもその後ワイコンを外したから、もっと照明を増やしても大丈夫だったろう。けどそういう事を試してる余裕がなかった。。

問題が起こりました。
撮影終了後にビデオカメラで再生してみたら、ブロックノイズが頻発する!
ミニDVテープ、VX2000で撮影しました。今まで、音が途切れることはたまにあったけれど、あるいは撮影始めて最初の1秒ぐらいブロックノイズが出る事もあったけれど、こんなに頻繁にブロックノイズが出るのは初めてだ。
これは録画の問題か、再生の問題か、再生の問題ならいいけれど…そう思って家に帰ってデッキで再生してみたけれど、ダメだ〜。数秒から1秒おきのブロックノイズは消えてくれない。
60分テープにほぼいっぱい録画して、29分頃までブロックノイズが頻発してます。残りの半分はどうやら大丈夫。
大丈夫とは言え、パソコンに取り込んでみたらブロックノイズのないテイクでも音がずれる事がある。
どうやら音が途切れて記録されてるところがあって、ビデオトラックと同期しなくなってしまうみたい。(テープをデッキで再生してる時は、途切れながらも同期する)

ナゼこんな事が起こったのか。わからない。
前日にヘッドクリーニングテープをかけて、チェックもかねて録画してみたけれど、なんともなかったんだがなあ。
ソニーのカメラだけど、久しぶりにソニーのテープを使ったから(ちょっと高い)拒否反応おこしたかな。

買ってから3〜4年経つから、そもそも中古で買ったから、もうヘッドが寿命なのかな。あまりハードに使ってはいないつもりだけど‥いや、使ってるかな。。
しかしよりによって、急に、こんな大切な撮影の時に。
でもまあ、ミュージックビデオだから、細かくカットするから、なんとかなるでしょう。
正常なテイクが半分あれば、もう半分のテイクでブロックノイズ頻発してても、ノイズのない部分を1秒とか2秒とかでも使えるので、今回の製作に関してはさほど大きな問題ではない、かな。

むしろ今後が問題。
これから常にブロックノイズ頻発になるのかしら?そうなったらあきらめもつく。修理か廃棄しかないものね。
それを検証するために他のテープに同じビデオカメラで録画してみた。
まず、ソニーの古いテープ。以前撮ったもので、消してもいい内容のもの。これ、10年前のテープだな、古すぎかな…。これはブロックノイズ大会でした。駆動部から再生中にもあやしい音がするからこれはもうやめておこう。
考えてみたらクリーニングテープもソニーのだけど古いからなあ。未開封のパナソニックのクリーニングテープがあったのでそれをかけてみる。
数ヶ月前に録画したビクターのテープの未使用部分で録画テスト。問題なし。
新品のソニーテープで録画テスト。問題なし。
徒歩15分ぐらいの公園まで行って、池の黒鳥(コクチョウ・カモ目カモ科)をしばらく撮影しました。
音も映像も正常に記録されてます。羽が美しい。

クリーニングテープに問題ありかな。今まで使ってたのもかなり古いから…。だってそんなに頻繁に使わないからさあ、まだ耐用回数までいってないもん。
まあヘッド自体がかなり摩耗してもいるだろうから、今後このビデオカメラを使うとしても、おそるおそるになりますね。ヘッド交換すると3万円ぐらいかかるから、まだ使う事になりますが。
インタビューとか撮るとき問題だなあ。映像のブロックノイズだけでなく音も途切れるから、そうなったら完全アウトだ。ワンテイクごとに確認できればいいんだけれど、テープってそれが面倒だよね。
なんであれサブカメラも必ず持って行かないと。TG1があってよかった。

記述2につづく

FUのサイト
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http://www.myspace.com/izigenmusic

2008年10月5日日曜日

落語の土地に行ってみる 日本橋中州 rakugo:nakasu

落語「夢金」
欲張りだけどかわいげのある船頭が、船の上で浪人者から殺人をもちかけられる。
一緒にいるこの娘を殺して金を奪おう。
どうせ断ったって自分が切られるだろうから、話にのったふりをする。
「船の上でそんな、刀振り回されて血が流れるってえと、後で掃除が大変だ。それよりもあの中州でもってやれば、そのうち上げ潮になって死体は流されちまってわからねえ」
うまく浪人を言いくるめて、浪人だけを先に中州に降ろしたところで、船から竿を張って逃げる。
どうやら浪人は泳げないらしいので、船頭ここぞとばかりに罵詈雑言をあびせる。

このような話なので、中州だったらどこでもいいんだろうけれど、だいたいの落語の解説書には、今の中央区日本橋中州にあった、隅田川の中州になってます。(以前中州だったから地名が中州)

今は普通にマンション街になってます。


清洲橋(江戸時代にはありませんでした)のたもとから下流を見て。ここが中州だったのか〜。


神社がありました。
こんぴら様系神社です。碑文によると、明治になって中州が埋め立てられて建立されたそうです。その後関東大震災などあって、昭和29年に再建されました。


はてこの中州、江戸時代、お店があったりして盛り場にもなってたとかいう記述を別の本で読みましたが、満潮のたびに沈むような中州だったら、常設の店が出るわけがないよね。
江戸時代と言っても長いから、後期になるほど埋め立てが進んで、盛り場になったのかな。
別の中州かな。
いや、上の写真の神社も、商売人の集まりが建立したようだから、明治の当初は商業地として見込まれていたのでしょう。
今はオフィスや倉庫はあっても、商店街らしいものはありませんね。

中州という刹那性と開放感が、盛り場としての吸引力になっていたのでしょうか。
中州だから誰が住むわけでもなく、誰の土地でもなく、雨が降り続いて水かさが増えたらすべて流されてしまう(実際にはそこそこ埋め立てられて、滅多にそんな事にはならないとしても、誰もがそんな"危機"をおもしろ半分に想像するのでは)、そんなところに縁日でもあったら、たしかにわくわくしますね。
きっちり埋め立てられて誰かの土地になったとたん、魅力がなくなるというのはわかる気がします。

2008年10月1日水曜日

映画「崖の上のポニョ」

於TOHOシネマズ西新井

やっと見たポニョ。

宮崎駿の映画は「ラピュタ」からすべて映画館で見てます。
(おっとナウシカも名画座で見たなあ)
近年では「千と千尋の神隠し」が僕の中では大当たりだし、「ハウルの動く城」も十分楽しめた。
ひとつひとつのシーンに感激できれば、少しぐらいわかりにくいのもミステリアスでいいのだ。

でもポニョは、予告編見た感じだとわりと普通っぽいし、子供向けに作った映画みたいだし、それを大人が"評価"してやろうと見るのは何か違う気がする。
そう思って、見ないでもいいかな〜と思ってたけど、なんとなく見ました。公開から2ヶ月もたって。

うんまあ、特に大きな感激も不満もなく、でしたね。
直前に「WALL・E」や「ティンカーベル」のきらびやかCG予告編を見たので、最初の海のシーンの色数の少なさに、あれ?と思った。
もっと色彩にこだわる人かと思ってたけど、予算のつごう?それとも2Dセルアニメの製作環境がだんだん厳しくなっていることのあらわれ?肩の力を抜いてみた?

音楽がどうもよろしくない。久石譲らしいけど、なんだかやっつけ仕事だなあ。
音楽で感情を二重、三重にふくらませて表現できるのに、せっかく深読みできそうな描写や記号がいっぱいあるのに、ひたすら薄っぺらくありきたり。
まさかこれが子供向けのつもり?
時間がなくて他の作品用の音楽を貼付けたのかな。
せめて軽快なテーマ曲を作って劇中で流してくれ〜。
せっかくボートで乗り出してから、わくわくタイムになってたのに。あそこでもっと"冒険"な音楽が欲しい。