2008年7月31日木曜日

500円DVD「オーソン・ウェルズ IN ストレンジャー」the stranger


「オーソン・ウェルズ IN ストレンジャー」
The Stranger
1946年 アメリカ映画
監督 オーソン・ウェルズ

コスミック出版のものを見ました。
マスタリングは普通。500円DVDにしてはわりといいと思います。

ナチスの戦犯がヨーロッパから逃れてアメリカの小さな町に住み、過去を偽って立派な市民となり、判事の娘と結婚しようとしている。
戦犯の追跡屋がエドワード・G・ロビンソンで、ナチス再興をもくろむ悪党がオーソン・ウェルズというしびれるキャスト。
普通に面白い映画です。オーソン・ウェルズの卓越したストーリーテリングが堪能できます。

「第三の男」でもそうだったけれど、オーソン・ウェルズって、善人そうな悪党、二面性のある悪役を演じるのが好きなんだろうねえ。
夕食の席で戦後ドイツをどう扱うかについて論じるシーンも迫力あって、役者としてもこんな凄いのに、演出家としてもテクニック満載、雑貨屋のおやじみたいな欲張りだけど憎めない脇役を描く余裕さえある。

コーラが5セントで、ボードゲームの相手して25セントかあ。今の日本円にしてコーラが120円ならゲームは600円。安くないけれど、ゲームに勝てば払わなくていいならそれくらいの金額でいいのかな。いやこれは映画だから、そうそうある商売じゃないのか、それともよくある光景だったのか。
映画のためにひねり出した商売だとしたらいいアイディアですね。登場人物の注意の焦点を描けるし、雑貨屋おやじのキャラも立つし。
もうひとつ気になった風俗は、男子高校生に流行の「鬼ごっこ」。
適当な訳語がないんで「鬼ごっこ」にしたんだろうけれど…。
だれか「逃げる者」を決めて、それを多数が追いかける。逃げる者は細かく切った新聞紙などをバラまきながら走って、自分がどこを通ったか跡を残しながら逃げる。
追う側に有利なので、スタートはおそらく時間をあけてから追いかけはじめるだろうし、ある程度まで逃げたら「逃げる者」の勝ちなんでしょうねえ。
たとえば、バラまいている新聞紙がなくなったら遠くへ逃げる事ができない、移動する時は新聞紙を撒きながらでなければならない、それで何分かの間つかまらずに逃げ切ったら勝ち、そういうルールかな。映画ではそんな説明などなしに、新聞紙をバラまきながら走っていく者と、追いかける一団しか描かないから、それがサスペンスの重要な小道具にもなってるから、おそらく当時のアメリカではよくやってたんだろうなあ。
どう見ても子供の遊びなんだけど、まあ高校生ぐらいなら、なんかのはずみで子供の遊びに熱中することもあるよね。
やってみれば面白いかも知れない。逃げる方になったら、なにか撒きちらしながら走るというのもあまりない体験だし、追う方も跡を追って行く面白さがあるだろうから。

ま、それらは本筋とは関係ないんですけど、鮮やかな演出の重要なネタになってるのです。

高い完成度のサスペンス映画であるけれど、その時代のせいか、みなさん鷹揚ですね。
今の映画だったら、さあここで悪党と対決、逮捕というクライマックスになりそうなタイミングで、「さて翌日…」になるんですね。。
いくら戦犯逮捕のためとは言え、娘がオトリにされてすぐにも殺されるかも知れない状況を許すなんて、温和なお父さんものわかりがよすぎる…。これは今の映画が「家族愛」を描きたがるのに対して、1946年だから戦争の名残もあって、社会のために個人が犠牲になるその範疇がやや広いという事かしら。

プロパガンダ映画でもあったのかどうか。
戦勝国側が戦犯を裁く問題は置いといて、実際、戦場だったヨーロッパからはいい人も悪い人もアメリカに流れ込んでいたろうから、こういう事例もありはしないかと当局は警戒してたのかも知れない。
でもオーソン・ウェルズとしては、二面性のある悪人を描きたかった演じたかったというのがまず第一だと思うけれど。

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