9月になりましたが、見たのは8月なので。
近所のプールも例年は8/31までなのに、今年は9/2までだし。
「最前線物語」
THE BIG RED ONE
1980年 アメリカ映画 サミュエル・フラー監督
サミュエル・フラーというと「ストレート・トゥ・ヘル」を当時劇場で見ましたが、まるで覚えてないですねえ。
むしろ本作の方が何度かテレビで見てるのでそこそこ覚えているつもり、だったのですが、同じ映画でも年月を経ると印象って違うものですねえ。
こんなに美術にこだわった映画だったとは。
子供の頃に見て、ハラハラする(ための)シーンにハラハラして、それ以外はあまり覚えてなかった。ノルマンディーのシーンとか。
でも今見ると、それら戦闘シーンは淡々としていて、いや淡々とまではいかなくてもどこかさめている。
それよりも美術、セットやメイク、小道具、人物の言動などにアイコンをちりばめていて、それがどんどん脳みそにインプットされていく。
いきなりオープニングからして、ひと気のなくなった戦場で"狂い馬"に蹴り殺されそうになる。そしてそこには眼窟に虫のたかったキリスト像が。
その他、美術と言っても大道具小道具のみならず「ストーリィに必要な"説明"とかハラハラさせるための演出や演技」以外の要素をすべて含めて言ってるのだけれど、それらがじわじわと攻めて来る。
強烈なのが肩車された状態で息絶える収容所の少年と、おそらくそれを知っていながら肩車したままで無表情でいるリー・マービン。
リー・マービンの印象が強すぎて、他の若手俳優もがんばってるのだけれど、彼らの映画にはならない。
ロバート・キャラダインのモノローグはあってもリー・マービン扮する軍曹の心を写した映画になる。
それでいいんだけど、ちょっぴりもったいない。
全体的には美術的価値で売るような映画じゃないかも知れない。
第二次大戦アメリカ軍の、アフリカ戦線ヨーロッパ戦線ツアー、みたいな、テレビ「コンバット」を劇場向けにアレンジしたような脚本なのだ。(「コンバット」あまり覚えてないけれど)
あくまでアメリカ映画にしては美術にこだわってる、というのと、なんとなく映像の感じから予算規模を推し量ると、そんなに潤沢な予算があったとは思えないから。
実際ところは知らないけれど、ヨーロッパ映画の現場には、予算は少なくても美術にこだわれるようなサイクルがたぶんあるのだろうけど、アメリカ映画は違うと思う。
だからこの映画は、もっともっと語られていいと思う。娯楽映画としてのバランスもあって、これだけ美術にこだわった映画を作るのはすごい。
戦争映画のかたちをとったおとぎ話ではあるけれど、あとに残るのはむしろリアルな心象風景です。
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